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これまで書いてきた旅の記事や、書ききれなかったこぼれ話を集めてみました。

色鮮やかな小舟と熱々のサバを堪能する、バリ島ジンバランの魚市場 インドネシア(5)

色鮮やかな小舟と熱々のサバを堪能する、バリ島ジンバランの魚市場 インドネシア(5)

さほど遠くない距離だから、とジンバランの魚市場まで歩こうと思ったのが間違っていた。10分もたたないうちに雲が晴れて、汗が吹き出す。所々に落ちる木陰をつたいながら、日焼けの跡が付かないように、シャツの袖を肩までたくし上げた。

トタンに覆われた市場を目前にして、木陰のベンチで一息ついた。隣の老人は挨拶がわりに軽くうなずくと、そのまま青白色の海一面にちりばめられたカラフルな小舟をじっと見つめている。私も同じように海を眺めてみた。穏やかな潮風が日に焼けた肌を優しくなでる。時折桟橋を行き来する以外、船は緩やかな寝息をたてるように、海面を上下するのみだ。

近くのモスクから、お昼のお祈りが流れてくる。そういえば、「昨日からラマダンが始まった」とタクシーの運転手が言っていた。バリはヒンドゥー教徒が大多数だからと聞き流していたが、ジンバランにはイスラム教徒も多く住んでいるようだ。海辺の屋台を切り盛りする女性たちがかぶる色とりどりのベールが、強い日差しに映える。

ふと、海から一艘の小舟が浜に戻って来た。すると、どこからともなく数人の男性が現れ、ニ人一組でもっこを担いで次々と浜辺の小屋に歩いて行く。よく見ると、大きなマグロだ。運び込まれたマグロの重さを測って、次々と氷を敷いたトラックの荷台に積み込んでいる。

 40分ほど、次々とマグロが担ぎ込まれ、秤のそばでは、大きなサングラスをかけた女性が小さなノートにせっせと重さを書き込んでいく。約50キロのマグロが20匹ほどあがったそうだ。まさかあの小さな船で釣ったはずもないし、沖合の船から積み込んで、浜まで運んできたのだろう。

すぐ隣にある魚市場は、薄暗く、気をつけないと触れてしまいそうなほど、狭い通路の両端にぎっしりと魚が並んでいる。商品を傷めないように、氷が沢山使われているからか、屋内は思っていたよりひんやりとして、匂いもそれほど気にならない。イワシやサバ、イカに海老など、私たちにもなじみのある魚から、カジキのような大型のもの、南国らしい色とりどりの魚やロブスターなど、種類が豊富で、どれもピチピチと新鮮だ。

 後日、ジンバランから車で30分ほどのセミャニックにあるホテルでインドネシア風海鮮スープの作り方を教えてくれたシェフも、海鮮はジンバランの市場から仕入れていると教えてくれた。「新鮮な魚が欲しかったら朝早いほうが良いけど、マグロの荷揚げを見られたなんてラッキーだったね。」

 店主が客の注文に応じておろしていた魚は、包丁を入れるとはち切れんばかりに身がそり上がり、なんとも美味しそうだ。市場の外で焼いて食べられるということで、大きなサバを1匹購入した。

市場の外では、あちこちから魚を焼く美味しそうな煙がモクモクとたっていた。近くにモスクもあるし、イスラム教徒が多いようだが、ラマダン中の彼らは日没まで何も口にする事ができない。なんだか申し訳ない気持ちになるが、背に腹は代えられない。店頭の少年にサバの袋を渡すと、手際良く内臓を取り出し、タレにつけて炭火で焼いてくれた。

魚が焼けるまでココナッツ水を飲みながら、向いのテーブルで気長に待つ。ココナッツを注文すると、大きな鉈で豪快に穴を切り込んでくれる。刃が繰り返し当たる部分なのか、分厚い木のまな板には大きなくぼみができていた。切り口が少しでもずれれば押えている腕が飛んで行きそうで、見ているこちらがドキドキする。

20分ほどでこんがりと焼かれた魚が、赤いソースとともに到着した。フォ−クもナイフもなく、焼きたての熱々を手で食べる。調理してくれた少年が無造作に入れているように見えた切り込みから、身がきれいにほぐれていく。ピリ辛のソースには程よい酸味があり、脂ののったサバの旨味がぐっと押し出されて、口に運ぶ手が止まらない。ヤシの木の木陰で優しい潮風を感じながら、なんとも贅沢で満たされた気分になった。

<取材協力>

エア・アジア

<旅の情報>

バリ島までは成田空港から直行便で約7時間。バリ島のデンパサール空港は島の南部に位置しており、車で1時間ほど走れば、島の南部に集中している主要な観光地のほとんどにアクセスできる。しかし、地域によっては交通渋滞が激しいので、移動は必要最低限に押えたいところ。ジンバランの魚市場は空港から車で約20分。移動には民間タクシーサービスのグラッブを利用した(https://www.grab.com/id/en/)。

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