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Hi.

これまで書いてきた旅の記事や、書ききれなかったこぼれ話を集めてみました。

国境越えたら別世界 メキシコのティファナで食べたタコス

国境越えたら別世界 メキシコのティファナで食べたタコス

メキシコのティファナへの入り口は、無機質なコンクリートの建物だった。友人たちに会いに訪れたアメリカのサンディエゴで「ティファナまで車で40分くらいだから行ってみよう」と誰かが言い出し、みんなで行ってみることにしたのだ。

メキシコへの入り口。サンディエゴから徒歩でメキシコ入りする場合は、物々しいこちらの国境事務所で入国手続きを行う

車は国境手前の駐車場にとめ、メキシコへは徒歩で入る。越境の手続きを行う事務所は要塞(ようさい)のようで、制服に身を包んだ職員たちがブースから質問しては、スタンプを押していく。長時間待たされることを覚悟していたが、たった30分ほどで手続きをすべて終えることができた。

国境事務所を出るとタクシーがずらりと列をなしており、どこからか聞こえてくる軽快な音楽に混じって「タクシー? タクシー?」と叫ぶ声が響く。周辺には屋台や売店が並び、犬たちがのんびりとたむろしている。まったくの別世界だ。

客引きをしていた運転手の1人に「6人で一緒にティファナ中心部まで行きたい」と伝えると、大きくうなずいて「ついてこい」と言わんばかりに歩き出した。そして、どう見ても5人乗りの普通車のドアを開けると、あぜんとしている私たちに意見する間も与えずに「心配するな」と身ぶりで乗り込むようにうながし、7人の大人を詰め込んだ車はダウンタウンへと向かって走り出した。

訪れたのは年末で、かつ嵐が近づいていた時期だったため、広告などで見慣れた「太陽がさんさんと輝くメキシコ」のイメージには程遠く、どんよりと曇って上着が必要なほど肌寒い。カリフォルニア最南部に位置するサンディエゴも、メキシコのティファナも、冬場は結構寒いのだ。観光客を意識してか、街の中心部はきれいに整備されていた。

ティファナ訪問の目的の一つは、タコスを食べることだった。タコスは、トウモロコシ粉や小麦粉を丸く伸ばして焼いたトルティーヤと呼ばれる皮に、具材を挟んで食べるメキシコ料理で、アメリカでも人気がある。一緒に行った友人たちはみなサンディエゴ在住で日常的にタコスを食べているが、本場で食べてみたいという気持ちは万国共通なのだろう。

友人が案内してくれたタコスの屋台。正面はなく、タコスを求める人たちがぐるりと屋台を囲む。常連とおしゃべりしながら、あちこちから飛んでくるオーダーをさっそうと仕上げて行く様子は、まさに職人技

はじめに訪れた屋台は、タコスを求める人々にぐるりと囲まれ、割って入るのにはなかなか勇気がいりそうだった。あちこちから飛んでくるオーダーに耳を傾けながら、店の男性は鍋やボウルがいっぱいに置かれた台に手を伸ばし、テキパキと仕事を進めていく。出てきたのは、柔らかく煮込まれた豚肉の乗ったタコス。トッピングはパクチーとみじん切りのタマネギのみだが、トルティーヤのトウモロコシの香りと肉のうまみでなんとも味わい深い。一つ100円ほどだが、これだけでおなかがいっぱいになりそうだ。

この屋台で売っていたのは、柔らかく煮込んだ豚肉のタコス。タマネギとパクチーがトッピングされ、シンプルで味わい深い。人気店なのだろう。客が入れ代わり立ち代わり、途切れることはなかった

タコスの食べ方にはコツがいる。トルティーヤはもろく、具材の汁気と重みで破けやすい。また、両はしを織り込まずに食べるので、傾けると反対側から具材が落ちてしまう。タコスを口に運ぶというより、口をタコスに運ぶようにしないと、上手に食べられない。水平を保ったままそっと持ち上げて、できるだけ手早く食べないといけないのだ。

腹ごなしを兼ねて目抜き通りやアーケード街などを散策しつつ、シーザーサラダ発祥のレストランやマルガリータのおいしいバーを訪ねているうちに、すっかり暗くなってしまった。

シーザーサラダの発祥とされているシーザーズホテルのレストランでは、注文すると目の前で作ってくれ、エレガントな動きに見入ってしまう

20cmほどのレタスがきれいに並べられたサラダは、インパクトもボリュームも満点だ

サンディエゴに帰る時間が迫る中、最後の締めにもう1軒、タコスを食べに向かった。一緒に行った友人が以前訪れたことのある店で、「ティファナに行くなら是非再訪したい」と本人たっての希望だった。

一日の締めに向かったのは「Taqueria El Franc(タケリア・エル・フランク)」。ぜひまた行きたいと思っていたそうで、広い店内は地元の人でにぎわっていた

店頭では肉が焼かれていて食欲をそそる。ぐるぐると回転しながらおいしそうに焼けた外側を薄くスライスしてタコスに乗せていく。ここだけ見ると、トルコのドネルケバブや中東のシュワルマのようだ

メニューには具材となる肉の種類や部位がずらりと並び、店頭で焼かれている肉が食欲をそそる。

ジューシーな肉に、たっぷりとかかったワカモレソース、そしてピリッとアクセントを添えるタマネギ。すぐにおなかがいっぱいになってしまうのが本当に残念だ。すぐそばでは、どこからか現れた流しの歌い手がギターを弾きながら静かに歌っていた。

豚肉と豆に、パクチーと玉ねぎをトッピングしてワカモレソースを豪快にかけた「タケリア・エル・フランク」のタコス。1個100円ほどで、最後にいくつ食べたかを自己申告して支払うシステムだった

今回、首都メキシコシティ在住の友人、マリエルが紹介してくれたのは、小さい頃にお母さんがよく作ってくれたというカボチャと豚肉のタコス。「日本の友達に作ったことがあるけど、喜んでくれたから、きっと気にいると思う」と言う彼女の言葉通り、優しいうまみとコクのある甘さが病みつきになるタコスだ。

<レシピ>

【材料】
豚ロース(一口大に切る) 200g
カボチャ(一口大に切る) 250g
トウモロコシ(皮をむいて実を包丁でそいだもの、もしくは缶詰) 1/2カップ
タマネギ(みじん切り) 1/3個
トマト(ざく切り) 2個
ニンニク(みじん切り) 1片
トマトペースト 小さじ2
クミンパウダー 小さじ1/4
塩 小さじ1/4
コショウ 少々
ブイヨンキューブ 1個

マサ 1.5カップ
水 3/4カップ

【作り方】
1. 鍋に油を熱し、豚肉の表面の色が変わるまで5分ほど混ぜながら焼く。
2. 肉を鍋から取り出し、同じ鍋にタマネギとニンニクを入れて、タマネギが透き通るまで5分ほど炒める。
3. カボチャ、トウモロコシを加えてさらに炒める。
4. 豚肉を肉汁ごと鍋に戻し、トマト、トマトペースト、クミンパウダー 、塩・コショウを加えて1分ほど炒める。
5. ひたひたになるまで水を入れ、ブイヨンキューブを入れて煮立て、沸騰したら弱火にして、アクを取りながら2時間煮る。途中、水分が少なくなったら少し足し、最後の30分ほどで汁気を飛ばすように煮詰める。
6. 煮ている間に、トルティーヤを作る。ボウルにマサを入れ、粘土のような質感になるまで少しずつ水を足して混ぜ合わせる。1分ほどこねてから6等分し、丸める。
7. 20cmほどに切ったクッキングシートの上に丸めたトルティーヤの生地を置いてさらにクッキングシートをかぶせ、その上からまな板を置いて体重をかけて丸くつぶす。ある程度平らになったら、クッキングシートの上からめん棒などで直径15cmくらいの円形にのばす。

8. フライパンを強火にかけ、伸ばしたトルティーヤの生地を入れて片面1分ずつほど焼く。焼けたらお皿に乗せて、ぬれぶきんをかぶせておく。
9. できあがり! ワカモレソースやサルサソースを添えてどうぞ。

トルティーヤ(上)、タコスの具材(左下)、ワカモレソース(中下)、サルサソース(右下)

ワカモレソース:アボカド1個、ライム果汁1/2個分、紫タマネギ(みじん切り)大さじ2、トマト(みじん切り)1個、パクチー(みじん切り)大さじ3、ニンニク(みじん切り)1片、塩小さじ1/2、カイエンペッパー少々
作り方:ボウルに皮をむいて種を取ったアボカドを入れてつぶし、その他の材料を全て加えて混ぜる。

サルサソース:トマト(みじん切り)1〜2個、紫タマネギ(みじん切り)大さじ2、赤唐辛子(みじん切り)1本、ライム果汁1/2個分、パクチー(みじん切り)大さじ3、クミンパウダー少々、塩コショウ少々
作り方:すべての材料をボウルに入れて混ぜる。

トルティーヤの上に具材を載せ、好みのソースをかけ、くるんで食べる。手が汚れるのでお手ふきは必須

この記事は朝日新聞デジタル版に2020年9月9日付で掲載されたものです。https://www.asahi.com/and/article/20200909/300279043/

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