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Hi.

これまで書いてきた旅の記事や、書ききれなかったこぼれ話を集めてみました。

世界中のワイン文化を網羅する必見の博物館 ボルドー(2)

世界中のワイン文化を網羅する必見の博物館 ボルドー(2)

街の中心にある荘厳なブルス広場からトラムでガロンヌ河に沿って北上すると、街並が徐々に近代化していく。無機質なビルやかつて倉庫だった建物に入るアウトレットショップを通りぬけ、10分ほどでぽっかりと空が開けた。水辺に連なる工場の先、何世紀にもわたりボルドーの玄関口だった港にワイン文明博物館がある。

今年6月にオープンしたばかりの博物館は、蛇がとぐろを巻いたような外観が目を引く。ボルドーで出会った人が「もう行った?」と聞けば、フランス語で「La Cite du Vin(ワインの街)」と名付けられたこの博物館のことだ。一方で、外観のデザインには賛否両論あったようで、教えてくれた地元の運転手は「僕はモダンで良いと思っているよ」とウインクした。

ワインの一大産地、ボルドーが街をあげて造り上げたこの博物館では、歴史や文化、経済に地学など、多岐にわたる観点から世界中のワインを探求している。ワインに関して思い浮かぶどんな疑問にも明確な回答が、そして思いもよらない発見が見つかるような博物館だ。
とはいえ、子供も楽しめるようにデザインされたスタイリッシュな展示は、ゲーム感覚でまわることができる。同時に、幅広い情報や最新のデジタル技術を駆使した、驚くような切り口に、ワイン好きの大人も満足の内容だ。

例えば、文明のコーナーでは、「ワインとまじない」や「ワインの黄金時代」など、トピックスごとにまとめられた寸劇調の展示を見ながら、ワインの歴史をたどる。1分ほどの快活な寸劇をいくつも重ねると、最終的には古代エジプトから20世紀まで、壮大なワインのドキュメンタリーを鑑賞したような充実感があった。

世界各地のワイン生産者たちが、自分たちのワインについて語る映像展示も圧巻だ。聖者のような東欧の男性やカウボーイハットをかぶった南米の生産者など、歴史や文化、背景が違っても皆一様にワイン作りにかける情熱が伝わってくる。

解説は、日本語を含む9カ国語から選べるので、フランス語や英語ができなくても内容を理解できるのも嬉しい。

ワインの香りや、色のサンプル、触感など五感に訴える展示も楽しく、実用的だ。「葉巻」や「ベリー」など、ワインの解説で目にする香りを実際に嗅いでみると、自分が想像していた香りとギャップがあるのも新鮮で面白い。

8階のテイスティングバーでは、日本語が堪能なジルダさんが何でも質問に答えてくれる

8階のテイスティングバーでは、日本語が堪能なジルダさんが何でも質問に答えてくれる

味覚も忘れてはならない。入場券には、常時20地域のワインとジュースが揃う最上階のバーで、テイスティングが一杯ついてくる。ズラリと並ぶ世界中のワインをじっくりと吟味する表情は皆真剣そのもの。バーを囲む展望スペースからは、ガロンヌ河とそのほとりにボルドーの街が一望できる。

ワインの街にふさわしい新しい玄関口だ。ぜひ、1日かけてゆっくりワインの奥深さを楽しみたい。

<ワイン文明博物館ガイド>

開館時間:8月31日までは午前9時半~午後7時半。その後は多少変動するので、要確認。
入場料:大人20ユーロ
住所:150, 134 Quai de Bacalan, 33300 Bordeaux, France
http://www.laciteduvin.com/en(英語)

取材協力:ボルドーワイン委員会

*この記事は、2016年8月16日付で朝日新聞デジタル版&Travel「あの街の素顔」に掲載されたものです。https://www.asahi.com/and_travel/20160816/1733/

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